歯列矯正を比較検討

非抜歯矯正法は、原因を除去し、奥歯を起こして、乱れた歯並びを少しずつ3次元的に元の位置に戻す治療です。
この方法だと、前歯を倒す原因となる親不知を抜くことはあっても、小臼歯を抜く必要は必然的になくなります。可能性はきわめて低く、不正咬合や顎関節症に由来する不定愁訴も改善していきます。
このタイプの非抜歯療法は、矯正歯科の世界ではまだマイナーです。しかし根本原因を取り除き、歯を抜かずにできる矯正治療は、歯科の原点に返ったら当たり前の治療だと思います。

あるべき姿に戻す。これが、非抜歯療法の基本です。
従来の矯正治療は、生物学的根拠が希薄でした。地球上に生命体が誕生してから、長い年月をかけて生物は進化してきました。
いまある人類の姿は、長い進化のうえに成り立っているものです。そういう生命進化(系統発生学)を無視して、はたして矯正治療はできるのでしょうか。
系統発生学的に考えると、人間の体は生まれたときからあるべき位置や形におさまり、機能しやすい状態が定まっています。歯やあごも例外ではありません。
ところが、何かしあるべき姿に戻すのが、真の矯正治療ではないでしょうか。あるべき姿に戻れば機能も回復し、その人の持つ本来の美しさがよみがえってきます。
機能美という言葉がありますが、機能が備わってこそ形も美しいのです。小臼歯を抜いて前歯を並べ替える矯正治療では、そういうあるべき状態はあまり考慮されていません。
歯やあごの移動も、ほとんど矯正医のカンや見た目に頼っているのが現状です。ところが全部の歯が残っていれば、近い姿に戻しやすいのです。

私は歯を移動させる際に、最新鋭の検査機器を動員して、その位置を決めています。綿密な計算から割り出したかみ合わせは、系統発生学的見地から見ても、もっとも自然に近その人が生まれながらに持っているいちばん近い形だと考えています。
厚生労働省が中心になって近年展開している運動に、80歳までに20本以上の歯を残すことを目標にする運動です。おそらく高齢になっても20本以上自分の歯があれば、何でもかんで食べられるということからきたのでしょう。
T大大学院のW・M・歯学研究科長らのグループは、「歯の数が減ると脳が萎縮してしまう」といった、『仙台市内の○歳以上の高齢者1167人を対象に調査した。健康な652人は平均0.9本の歯があったが、痴呆の疑いのある日人は同9・4本と少なく、歯の数と痴呆との関連が示唆された。
さらに高齢者195人の脳をMRI(磁気共鳴画像化装置)で撮影し、残っている歯や、かみ合わせの数と、脳組織の容積との関係を調べた。その結果、歯が少ない人ほど、海馬付近の容積が減少。
意思や思考など高次の脳機能に関連する前頭葉などの容積も減っていた。たしかに歯がたくさん残っているお年寄りほど日常生活でも自立でき、認知症になる確率が低いようです。
逆に寝たきり老人や認知症老人になると、残っている歯もぐっと少なくなるというデータもある。しかしそれなら20本ではなく、全部の歯を残すべきではないでしょうか。
たとえば80になったから、手や足の指が一本なくなってもいいとはだれも考えません。目や耳も2つあるから一つなくてもいいと考える人はいないでしょう。
生まれたままの姿でいることがいちばんいいのは、いうまでもないことです。ですから私は20本といわず、親不知を除いて28本全部を残す「8028運動」を提唱しています。
それとともにめざしたいのは、「8488咬合」です。前歯が上下で8本、犬歯が4本、小臼歯が8本臼歯が8本のです。

生涯28本の歯を残し、その咬合が「8488」になるような配列を維持できれば、顎関節との調和もとれ、頭蓋骨のひずみもなくなります。老後も健やかに、ほけることもなく過ごせるでしょう。
従来の矯正ではけっしてかなわなかったことが、このタイプの非抜歯矯正によって可能「非抜歯」矯正治療の矯正科に関わらず、医療は非抜歯矯正をするというものでした。もちろんすべての受け口や開岐が矯正できるわけではありませんが、い矯正歯科ではなく歯科の口腔外科で行われ、入院が必要です。
ひどい受け口や開岐は、これまであごの骨の異常が原因だといわれてきました。
それを矯正するには、上下の歯を個別に並べてから、骨を切るなどの外科手術を行います。しかし手術が適応となる受け口や開岐でも、すべてが骨の異常によるものではないことがわかってきました。
奥歯が原因になっているのです。たとえば親不知になるケースや、奥歯のかみ合わせが悪いために開校にするケースです。

そういうケースでは、邪魔をしている親不知を抜き、奥歯のかみ合わせを整えることによって矯正できます。そうなると、顎関節症がこれだけ問題になっているにもかかわらず、いま日本で行われている矯正治療その人に合った理想的な歯並びは、顎関節や岨鴫筋に負担をかけない歯並びです。
そういう歯並びをつくるためには、顎関節の機能を入念に検査しなければなりません。私は矯正治療の前と後に必ず顎関節のチェックを行い、顎関節に負担をかけない歯並びにする。矯正したいのなら、手術のほうがいいでしょう。
骨格が変わるので、あごの形が劇的に変化します。手術は全身麻酔をかけてあごの骨を切るのですから、患者さんにとってはかなりの負担になります。
手術で後遺症が出たり、体調を崩すなど、問題が出てくるおそれもあります。手術を受ける際には慎重に検討し、矯正だけで治せるものは治したほうがいいと私は考えています。
手術しなければ治らないといわれた患者さんも、すぐに手術を受けるのではなくきちんと検査を受けられてから決めるといいでしょう。顎関節の機能をあまり考慮に入れていないようです。
顎関節の適正な検査自体が、歯科医のあいだでまだそれほど普及していないのが現状です。その結果、顎関節症の患者は私が行っている原因除去療法では、顎関節に調和した歯並びが基本です。
かみ合わせが原因の不定愁訴も必然的に解消していきます。歯並びの矯正は、慣れてしまえばどうということはありませんが、ブレースという矯正装置を歯に固定して行います。
通常短くて1〜2年、まれに長くて4年ほどです。最初は違和感があり、食事や会話などがしにくくなります。
また口を開けるとブレースをつけていることがわかり、できるだけ外力を長期間かけないほうがよいように思う女性も多いようです。生体にとっても、矯正期間をなるべく短くし、目立たない装置にしてほしい。
これが、治療に際してほとんどの患者さんが抱く希望です。私はなるべく患者さんの希望に添うように治療を行っていますが、ある程度の矯正期間がかかるのはやむをえません。
歯が動き、新しい組織ができてそれが生体に適応するまでに、相応の時聞がかかるからです。しかし私が行っている非抜歯矯正は28本全部を矯正するため、それぞれの歯の強制的で不自然な移動は少なくてすみ、従来の小臼歯を抜く矯正ほど期聞を長く要しません。

しかも奥歯まで起こしてしっかり立ってきますから、いたい一年から3年で終わります。再度奥の歯が前に倒れてくるようなこともほとんどありません。
装置についてはあとでふれるようにかなり改善され、なお、目立たない装置が普及しています。

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